バターを使ったお菓子を作る際だいたい一番始めに出でくるのが
バターを柔らかくする
だと思うんですけど
この‘バターを柔らかくする’のに
電子レンジで◯◯秒温めて
とか明記されてるレシピ
私は絶対反対派なんです。
ちょっと製菓理論的に説明すると
バターは結晶でできています。
バターやカカオ脂(チョコレートの主な成分のうちの一つ)などはとても細かい油脂の結晶がたくさん集まったものです。そしてこの結晶にはいくつか違う「結晶型(分子の並び方)」があって、この「結晶型」の違いによって働き方が全然変わってきてしまうんです。
私たちがいつも使っているバターは販売されるとき結晶が一番安定した状態に調整されています。
一番安定している状態というのは、言い換えればバターの働き
つまり
- 空気を含んで白っぽくなるまで立てられること(クリーミング性)
- 温度によって粘土のように自由に形をかえられること(可塑性)
- 生地に広がってさくさくとした口当たりにすること(ショートニング性)
こういう働きをしっかりしてくれるという事です。
ですから
せっかく良い安定した結晶型のバターでも温度を上げすぎて溶けた状態にしてしまったら違う不安定な結晶型になってしまうので上記のような働きをしてくれなくなって
- カトルカールが膨らまなかったり、
- パイ生地の層ができなかったり、
- 口当たりの悪いバリバリしたクッキーになってしまうわけです。
だからバターは柔らかくしすぎちゃ駄目なんですね。
もう一つ付け加えると
一度溶けてしまったバターはもう一度冷やし固めても同じバターにはならないという事
結晶の状態が違っちゃってるわけですから。
専門学校の講師時代・・・実習室にて。
実習で生徒が誤ってバターを溶かしてしまったことがあるんですが(実はこういう事かなり頻繁にありました(笑))
「せんせ〜(たいてい甘えるようにボールを持ってくる)バターが溶けちゃったんですけどぉ・・・」
「ダメッ!それもう使えないっ!でも代わりは無いからそのまんまやんなさいっ!」
(びしっ!と言う怖い先生の体)
で、結果浮かないカトルが見事に出来上がるという(笑)みんなにとって貴重な失敗例ですのでそれは共有してました。
・・・話をもどします。
「結晶」って時間をかけて作り上げるものじゃないですか
バターだって安定した結晶型にするのに、適正な温度を保持する熟成(エイジング)という工程を8時間から12時間かけて行います。
その時間をかけて作り上げた結晶を急いで電子の力で壊さ(溶かさ)なくてもいいじゃないかと思うんですよね。それも壊し(溶かし)ちゃ駄目なのに。
ただ、今は電子レンジの機能がすばらしくて低い温度設定でバターやチョコレート、固いアイスまでいい感じに柔らかくしてくれるようになっているのも私は知っています。実際、「すげ〜〜〜っ!!(目元キラキラ)」と思わず新機種を購入したくちです。
・・・使わないのに(笑)
もちろんその機能、試したことはあります。
でもしっくりこなかった。多分ですが‘柔らかくする’というより‘壊してる’気がしたんですね。私は。
それにバターが柔らかくなるのにそんな時間かかるのかな?かかっても15分?30分?そりゃ電子レンジの30秒に比べたらかかってますけど。
家でお菓子作るのにそんなに急ぐのはなぜ?
待ってたら柔らかくなるのに・・・計量だけしといて他の事してればいいわけだし、途中状態をみていい感じになったら作り始める方が確実に美味しくできますよ。だってバターの結晶が良い状態なんですもの。
あせって作ってもうまくいかないと思います。お菓子作りは。
それでも「だって、すぐ作りたいんですっ!」
という方に・・・
- バターを計量する際薄くスライスする
- 使うボールに貼付けるようにして広げる
- 広げたバターの上にラップをかける
- ラップの上から素手でパンチもしくは指圧の様に指で揉む
これはよくやる早くバターを柔らかくするやり方です。
家庭で作るお菓子の量ならすぐいい状態になると思います。
もしバターが溶けてしまったら・・・・
その時は溶かしバターで作るお菓子にしましょう。
代表的なのがマドレーヌかな。無理にバターを立てて作るお菓子を作ろうとしても出来ませんからマドレーヌのように溶かしたバターで作るお菓子に変更です。
時間の感覚ってひとそれぞれだと思うんですけど出来ればお菓子を作るときは少し心と時間に余裕を持って作って欲しいです。
その方が上手に、そして美味しく出来ると思います。