なるほど!お菓子事典 〜小さな製菓専門学校〜

製菓理論専門家が軽やかに、そして熱く語ります。

お菓子における乳化、そして乳化剤について

『パウンドで疑問に思うことがあります。。。。。乳化で頭がいっぱいす』

 

といった質問をいただきましたので、今回は乳化のまとめを。。。

その前に先ず、質問にあったパウンドの疑問というのはシュガーバッター法とフラワーバッター法での生地状態の違いが「乳化」に関係するのでは?ということからでした。

 

お菓子作りの場合とにかくいろいろな作用が重なって出来上がっていくものなのでこれだけでこう変わる!とは言い切れない事を前提にお答えするのを了承いただいて。。。

「乳化」での影響も大きいものだと思います。この後説明しますが乳化というのは2種類の液体をなじませていく作業ですのでフラワーバッター法の最初にバター(油脂)と粉を合わせて立てるという作業は乳化させる作業ではありませんよね。一方ご存知シュガーバッター法は先ず乳化から入る製法です。もうここから違います。

 

f:id:bonbonciel1013:20180610081802j:image

乳化についてまとめてみますね。

乳化とは

  • 互いに溶け合わない2種の液体(水と油)などに界面活性剤を与えてなじませる事。
  • 水と油のように、そのままでは互いに混合しない液体の一方が、他の液体のなかに細かい粒子となって分散する現象。
  • 水性のものと油性のものを混合する際、どちらかの粒子を細かくし、他方の液体に分散させた状態。
  • 水と油のように本来混じり合わないものを、細かい粒状にして、うまく混ぜ合わせる作用。

 

乳化剤とは

  • 水と油のような本来混じり合わないものの境界で働き、均一な状態をつくる作用を持つもの。
  • 乳化作用を持ち、さらにその状態を保持する物質。
  • 「水」と「油」のつなぎ役。

水と油はもともと混じり合わないというのは皆さんご存知のとおり、これは水と油が全く逆の性質(極性)を持っているためです。この二つをなかよしにする為の役目を買って出ているのが乳化剤です。間(境、界面)に入って中を取り持っているんですね。ちょっと難しく言うと乳化剤は界面活性剤の一種になります。

この乳化剤が働いてくれているので水と油が混ざり合うんですね。

乳化剤という言い方をするとなんか薬みたいですけど天然の乳化剤があります。というかそれがないとお菓子が作れないぐらい基本的なアイテムです。

そう、卵です。

もっというと卵黄。

製菓理論的にいうとレシチン。

 

乳化というのは水と油のどちらかに分散されている状態のことをいうのですから

2種類あるということですよね。

水の中に油。

油の中に水。

これ違う言い方で

水中油滴型。

これでできている製品例

  • マヨネーズ
  • 牛乳
  • 生クリーム

油中水滴型。

これでできている製品例

  • バター
  • マーガリン

乳化の状態に2つの状態があると説明しました。それで出来ている製品を見るとイメージしやすいのでは?

そして

乳化剤にも水に油をを結びつけるのが得意な(親水性が強い)タイプ

油に水を結びつけるのが得意な(親油性が強い)タイプがあります。

 

で、先ほど登場した卵(卵黄(レシチン))はこの2つのタイプどちらも持っています。

すごい!

お菓子作りってじつはこの「乳化させる」事すごく多いんです。例えばバターに卵を加える、バターケーキ、タルト、クッキー、アーモンドクリーム・・・・シフォンケーキも卵黄にオイル加えますね。焼き菓子多いです(笑)そして卵大活躍。

 

お菓子作りの「乳化」は乳化で出来た食品を利用したり、2種類以上の材料を混ぜ合わせて乳化をさせるといったことをしてるんですね。

 

お菓子における乳化剤の効果は他にもあります。

  • 生地をきめ細かく仕上げる。
  • 冷めても軟らかい状態をキープする。
  • 卵白にはたらいて生地を軟らかくふっくらと仕上げる。
  • 細かな粒子を生地の中に分散させてダマになるのを防ぐ。

 

本来友達になりにくい材料を友達にしていく乳化剤・・・他にもお菓子作りにいろいろな面で使われているんです。

だから乳化だけの問題ではなくいろいろな事が重なって生地状態に変化が起こるわけです。複雑だけれど面白いですよね。