なるほど!お菓子事典 〜小さな製菓専門学校〜

製菓理論専門家が軽やかに、そして熱く語ります。

10年のブランク

今回の仕事体験のお客様は以前故郷で10年お菓子の職人さんをされていた方でした。

 

「あら、じゃあ全然経験者じゃないですか?」

 

「いや、その後10年違う仕事してたので......

菓子屋だった事は忘れていただいて....」

 

「え〜?大丈夫でしょ!(笑)」

 

「いや、本当に全然...全くやってないんで...」

 

「.....でも、またお菓子やりたくなったわけですね」

 

「....はい」

 

彼は(珍しく今回は男性の方です)

 

まるで、以前自分がお菓子の職人だったことを消し去りたいかのごとく恐縮してる(笑)

 

あとで聞いたらかなり緊張していたらしい......

講師時代の意味ない威圧感が出てしまっていたのかなぁ.....(笑)

 

これから自分で本気でしたいことをしていこうと思っているなら

ブランクなんて何年だろうが関係ないと思います。

だって自分でやるんだもん。

企業に入るなら職務経歴書ってのを書いてどういう経歴でどんな経験があります!ってアピールしなければならないし、ブランクがあることがマイナスにつながる事もあるでしょうけど。

起業するならブランクがあろうが経験がなかろうが関係ないですから。

今回は'経験がある'ことだけでも逆にかなり有利ですよね。

 

ただ10年と言う月日はこれはお菓子の業界だけでないと思いますが

自分が経験していた時代とは明らかに変化(進化)していて、今現在に対応する為の努力はかなり必要ではあります。

お菓子でわかりやすく言うならば

材料

ですかね。

10年前に比べたらそれはそれはすごい変化(進化)でしょう!

チョコレートひとつにしても以前は大きなブロックの塊を牛刀で細かく刻む作業を延々やらねばならなかったのが今はタブレット型に加工されたものが多くなってきています。

昔は焼き菓子の生地に自然に色を付けるのも実は難しくてピンク色のクッキーを作るだけでも嗜好錯誤が必要でしたけれど、今はいろんな色のパウダーが開発されてピンクどころか紫やオレンジそれも着色料を使わずともカラフルなクッキーが普通に作れたりします。

お砂糖の種類だって昔はトレハロースもこんなにポピュラーではなかったしラカントとかもつい最近注目されてきた甘味料ですよね。

 

私は彼に

「作る技術はすぐ出来るはずだから先ず製菓材料屋さんに行くなりして今どんな材料が手に入ってどんな風に使うのか勉強しましょう。10年のブランクはそこだけですよ。」

と言いました。

 

「はい。でもほんと作ってないんで....」と自信なさげ(笑)

 

 

 

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 いつものクッキーを作ってもらったときの一コマ......

注目すべきはこのゴムベラの上の小さなひと絞り.....

これは生地がきちんと口金の先端迄入っているかの確認の様な行為なんです。

職人さんはこれ、やるんですね。

絞りの作業のときに、クッキー生地だけじゃなくてクリームとかも。

 

彼、自然にこれ、やってたんです。ほぼ無意識に。

 

やっぱりね。

 

10年のブランクあっても身体は覚えています。

消したくても消えない(笑)

 

経験って本当に無駄になるものはひとつもないと思います。

どんなことを始めるにせよ

今迄の自分の経験に自信を持って活かしていけたらいいですよね。

 

........

それにしても専門学校の講師を辞めてからもうだいぶ経つとおもうんだけど

この意味のない威圧感はいつになったら緩和されるのだろう......。

緊張させて申し訳なかったなぁ